大腸菌などの菌体成分のリポ多糖(LPS)は、私たちの体内に侵入すると発熱や致死性のショック症状を引き起こす危険な生物毒です。一方、カブトガニの血球に含まれる3種のタンパク質分解酵素前駆体(ProC、ProB、ProCE)は、LPSに反応して連鎖反応(凝固カスケード)により血液を凝固させて感染を防御します。半世紀以上にわたり、カブトガニの血球抽出液はLPSの検出試薬として全世界で使われています。今回、九州大学大学院理学研究院の山下啓介助教、柴田俊生助教、大学院システム生命科学府修士課程高橋俊成院生(現:Meiji Seikaファルマ)、川畑俊一郎主幹教授らの研究グループと生化学工業(株)の小林雄毅研究員との共同研究により、哺乳類細胞で調製した3種の組換え体を用いて凝固カスケードを解析し、天然のものと比較して遜色なく機能することが示されました(参考図)。
また、これらの組換えタンパク質分子を構成する機能領域(ドメイン)が詳細に解析され、凝固カスケードにおけるクリップドメイン(※)の機能が初めて明らかになりました。今回の研究成果は、絶滅に瀕するカブトガニの血球に頼ることなく、組換えタンパク質を応用したLPS検出試薬の製品化に寄与することが期待されます。
本研究成果は、米国の国際学術誌『The Journal of Biological Chemistry』のオンライン速報版で2020年5月14日(木)に掲載されました。近日中に確定版が掲載される予定です。